ココナッツオイルと5αリダクターゼ
ハーブに詳しい方はご存知だと思いますが、前立腺肥大、前立腺ガン等の男性ホルモン過剰で起こる病気に対して200年ほど前から欧米の自然療法の分野で使われてきたノコギリヤシという薬草があります。飽和脂肪酸と植物ステロールに富んだハーブです。
その脂肪酸組成はオレイン酸(C18:1)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)の順に多く含まれています。これらの脂肪酸のうちココナッツオイルに多く含まれるラウリン酸(C12)を含むC12~C16が男性ホルモンであるテストステロンをより強力なジヒドロテストステロンに変換する酵素である5αリダクターゼを阻害するという研究報告があります。これがノコギリヤシが男性特有の病気に効果があると信じられたメカニズムだと言われています。
この酵素は精嚢や前立腺など男性特有の組織にのみ合成され、これが阻害されることにより男性ホルモンによりより促進されるニキビや薄毛、前立腺肥大や前立腺がんなどに効果があると主張する研究者もいます(効果を否定する研究もあります)。
一方でノコギリヤシの副作用として性欲減退やEDなどがあげられています。これと同じ理由でラウリン酸を多量に含むココナッツオイルが男性ホルモン低下により、遺伝や環境によってはこれらの副作用が起こるという主張も少数ですが体験談としてあるようです。個人的には、この9年間日本におけるココナッツオイルの普及に携わっていますが、このような報告は一件もありませんでした。いずれにせよ、ココナッツオイルを継続摂取した後にこれらの症状が現れたら、摂取を止めて様子を見た方がよいでしょう。また、マイスターの皆さんの生活の場でこれらの症状が出たという場合は是非お知らせください。再度改めて皆さんに報告させて頂こうと思います。
ココナッツオイルの5αリダクターゼ阻害の影響はこのように賛否両論ですが、今後のさらなる研究報告を待ちたいと思います。
Liu J1, Shimizu K, Kondo R.
Anti-androgenic activity of fatty acids.
Chem Biodivers. 2009 Apr;6(4):503-12. doi: 10.1002/cbdv.200800125.
Raynaud JP1, Cousse H, Martin PM.
Inhibition of type 1 and type 2 5alpha-reductase activity by free fatty acids, active ingredients of Permixon.
J Steroid Biochem Mol Biol. 2002 Oct;82(2-3):233-9.
Abe M1, Ito Y, Oyunzul L, Oki-Fujino T, Yamada S.
Pharmacologically relevant receptor binding characteristics and 5alpha-reductase inhibitory activity of free Fatty acids contained in saw palmetto extract.
Biol Pharm Bull. 2009 Apr;32(4):646-50.
Kavitha Penugonda and Brian L. Lindshield
Fatty Acid and Phytosterol Content of Commercial Saw Palmetto Supplements
Nutrients. Sep 2013; 5(9): 3617–3633.Published online Sep 13, 2013. doi: 10.3390/nu5093617
Liu J1, Shimizu K, Kondo R.
Anti-androgenic activity of fatty acids.
Chem Biodivers. 2009 Apr;6(4):503-12. doi: 10.1002/cbdv.200800125.